ダイオード
ダイオードは、電流を一方向にだけ流し、逆流を防ぐ半導体部品です。整流器、保護回路、信号処理などに使用され、車載機器、産業機器、スマートフォン、コンピュータなどの様々な電子機器に欠かせません。ダイオードには、PN接合型とショットキーバリア型があります。
PN接合型ダイオードは、P型半導体とN型半導体を接合して電流を制御します。代表的なものに整流ダイオードがあり、電源回路で交流を直流に変換します。さらに、TVSダイオードは過渡電圧から回路を保護し、ツェナーダイオードは電圧の安定化に使われます。
ショットキーバリア型ダイオードは、金属と半導体を接合し、高速スイッチングと低電力消費を実現します。
ダイオードの構造と特性を理解することは、電子回路設計において重要です。
PN接合から生まれる整流効果。
ダイオードの素子はPN接合と呼ばれる構造を持っています。P形半導体からの端子をアノード、N形半導体からの端子をカソードといい、アノードからカソードの流れる電流のみを通して、その逆はほとんど通さないという働きがあります。この効果を整流作用といい、いいかえれば、交流を直流に変換する働きのことです。
いわば、ダイオードは「弁」。
ダイオードの働きを直感的に捉えるなら、それは「弁」、電流の「弁」です。電気の流れを水の流れにたとえてみると、アノードはいわば上流側、カソードは下流側。上流から下流へと水は流れますが、すなわち電流は流れますが、下流から上流には「弁」が閉じて流れない…。これがダイオードの整流原理です。
接合の構造にも、いろいろ。
ダイオードの接合構造は現在、大別して、PN接合とショットキー形に分かれます。前者は半導体と半導体の接合で、さらに拡散接合形、メサ形に分けられます。後者は、半導体と金属との間で起こる効果を利用するもので、通常、ダイオードにおける"接合"という言葉では表現しませんが、ここでは、わかりやすくするために、このカテゴリーの中で分類しておきます。そして現在、小電力・高速性を実現するショットキー接合形が脚光を浴びていますが、ロームはこのショットキーバリア・ダイオードのシリーズ化にも積極的に取り組んでいます。
順方向特性と逆方向特性
ダイオードにはアノードとカソードという2つの端子があります。アノードを (+)、カソードを (-) として、アノードからカソードに電流が流れるときの特性を順方向特性といい、VFやIFがこれにあたります。この逆に、アノードが (-) で、カソードに (+) が印加されたとき、ダイオードには電流は基本的に流れません。このときの特性を逆方向特性といい、VRやIRなどが逆方向特性です。
ダイオードの歴史
1.真空管以前から・・・。
二極真空管に整流特性、エジソン効果が発見されたのが1884年。そして、実にその8年前の1876年にはセレンの整流作用が発見されていました。このように、半導体の特性を利用して整流効果をだすダイオードの歴史は極めて古い…。でも、真空管よりも古いというのは、ちょっと意外な感じですね。
2.ゲルマニウムへ、そしてシリコンへ。
当初の原始的なダイオード ― セレン整流器や鉱石検波器は、黄鉄鉱や方鉛鉱など天然の亜酸化銅(多結晶半導体)を用いていました。その後、精練技術の進化とともに、ゲルマニウムやシリコンなど、感度のいいものが安定してつくれる単結晶半導体の時代に移ってきました。なお、ゲルマニウムは熱に弱いため、現在ではほとんどがシリコンになっています。