トランジスタの選定素子印加電力の計算方法
トランジスタを選定するにあたって、各種保証範囲内で使用しているか確認する必要があります。
しかしながら、保証項目にあるチャネル温度(素子の温度)を直接測定することは難しく、
Tj = Rth(j-c) x P + Tc の計算式を用いて算出する必要があります。
(Tj = Rth(j-a) x P + Ta でも代用可)
本項では素子に印加されている電圧・電流波形から平均電力を算出する方法について説明致します。
トランジスタの選定 素子印加電力の計算方法
電力計算方法
基本的に、平均電力は電流と電圧の積を時間で積分した値を時間で除したものです。
この場合、1周期を4つ程度の区間に分けて計算します。
実際の積分計算は、積分公式を用います。
以下で、「1.電流・電圧の確認」で確認した波形の例の計算を実際に行います。
(1)OFF→ON時
(2)ON期間中
(3)ON→OFF時
(4)OFF時は電流がほぼゼロ(実際には数nA~数10nA程度のリーク電流が流れています)と考え、OFF期間中の消費電力はゼロと考えます。
以上の計算から各区間における積分値を合計して1周期の長さ400μsで除すると、 平均消費電力は
なお、ここではバイポーラトランジスタの2SD2673の例でコレクタ電流:Icとコレクタ-エミッタ間電圧:Vceの積分を行いましたが、デジトラでは出力電流:Ioと出力電圧:Voで、MOSFETではドレイン電流:Id と ドレイン-ソース間電圧:Vdsで同様の積分計算を行えば、平均消費電力を計算することができます。
平均消費電力を求めたところで、仕様書のコレクタ損失(MOSFETの場合ドレイン損失)を確認します。
例:2SD2673の仕様書
この場合、平均印加電力が0.153Wで許容コレクタ損失が0.5W(推奨ランド:ガラエポ基板実装時)なので周囲温度25℃においては使用可能と判断します。(正確には、許容コレクタ損失は実装基板やランド面積などによる放熱条件によって異なりますが推奨ランド実装時の値を目安としました)
周囲温度が25℃以上の場合は、電力軽減曲線を確認して温度ディレーティングを行います。
素子温度の詳しい計算方法は、『素子温度の計算方法』をご参照ください。
電力算出用積分公式
電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出
安全動作領域(SOA)の温度ディレーティングについてはこちらのリンクをご確認ください。